【読書】医師のつくった「頭のよさ」テスト/光文社新書/本田真美著

読書

はじめに

娘は、言葉の発達が早いほうだと思う。

人の話を聞いて理解したり、自分の伝えたいことを的確な言葉で表現したり、そういった能力が4歳にしては高い気がする。

最近、「例えば」という言葉を使って物事を説明できるようになり、ますます大人っぽくなった。

そんな娘を見ていて、ふと疑問がわいた。

言葉の早さって、耳のよさと関係がありそうな気がするけど、娘は聴覚優位ということなのだろうか。

認知特性は、幼児期の今の姿から読み取れるものなのだろうか。

そんな疑問がわいたので本書を手にした。

認知特性とは

認知特性とは、外界からの情報を頭の中で理解したり、記憶したり、表現したりする方法のこと。

本書では、視覚優位、言語優位、聴覚優位の3つの認知特性を、さらに細かく以下の6つに分類している。

①写真タイプ

②三次元映像タイプ

③言語映像タイプ

④言語抽象タイプ

⑤聴覚言語タイプ

⑥聴覚&音タイプ

また、番外編として身体感覚優位という認知特性についても記述があった。

認知特性は遺伝する

毎日外来で子どもの発達を見ていると、認知特性も遺伝的素因が強いと感じます。

言語能力が高い子どもの親が弁護士や教員であったり、視覚認知力の高い子どもの親が建築家やテレビ関係者であったり、親の職業と子どもの認知特性の相関性からも、認知特性の遺伝は明らかであると思うのです。

我が子の認知特性がわかれば、いろんな面でサポートがしやすくなると思うので、なんとなくでも把握しておきたいところ。

両親の認知特性が遺伝するのなら、まずは親自身が自分をよく知ることが大切なのだろう。

本書に載っていた認知特性テストをやってみたところ、私は言語抽象、聴覚言語、聴覚&音に強くて、視覚、特に三次元映像に弱い感じだった。

学生時代、スポーツテストはいつもA判定なのに、球技系と体操系はイマイチだったこと、それと方向音痴なことも、おそらく空間認知が弱い特性から来ているのだと思う。

遺伝といえば、Twitterの知育アカウント界隈で、よく「学力は遺伝の影響が大きい」みたいな話がされている。

そもそも、学力と認知特性って関連が深いものなのだと思う。

極端に言語に弱い特性を持って生まれた子が、学校の勉強についていくのは大変なことだろう。

日本は、画一的な五教科重視の教育をするから、学校でどんどん劣等感を植えつけられることになるかもしれない。

言語能力がそこまで重視されない道に、うまく進むことができればいいと思うのだけど。

例えば、私の知人の息子さんは、勉強は苦手だったけど、料理が好きで小学生ぐらいから自ら台所に立っていたらしく、その道に進んでいる。

それと、学力には、認知特性だけでなく非認知能力も大きく関わっていると思う。

私の体感だけど、中学校の同級生たちのことを思い出すと、中間層の子たちに限っていえば、そこまで頭のよさに差があったと思えない。

結局、進学校に行った子たちは、一部の秀才を除けば、みんな頑張り屋さんだった気がする。

人間のさまざまな能力

本書には、認知特性とも関わりの深い、人間のさまざまな能力についての記述があった。

名前だけざっと書き出してみる。

ワーキングメモリー、言語操作力、数操作力、推論力、空間認知力、視覚認知力、聴覚認知力、一般常識、処理能力、手先の巧緻性、粗大運動能力、柔軟性、秩序性、創造性、社会性、衝動性、遂行機能、継続力、時間感覚

似たような認知特性の人でも、こういった細かな能力の違いによって、得意なことは変わってくるのだと思う。

ちなみに私は、大学生のとき、家の前のコンビニにごみ袋を買いに行ったのに、アイスだけ買って帰ってしまったことがあり、その日から自分のワーキングメモリーを全く信用していない。

一時的に覚えておかなければいけないことは、徹底してメモをしている。

経験を重ねることが大切

視覚優位者という結果になったけれども、「うちの子は言語優位者の特徴のほうがあてはまる」という場合もあります。だとしたら、親御さんのカンのほうが合っているでしょう。なぜならば、子どもの場合、経験によって認知特性が変化していくからです。

3歳頃までは視覚が優位ですが、たくさん言葉を覚えるようになったら言語優位の特性を発揮するようになることもあるからです。さまざまな経験を重ねることで、子どもの認知特性は発揮されるようになるのです。

本書には、子ども用の認知特性テストもついており、娘の結果はこんな感じだった。

聴覚のチェックリストは、言葉の発達の早さ、聞こえた情報に対する記憶力のよさなどに関連する内容で、娘によく当てはまった。

言語のチェックリストも、物語をつくるのが得意、出来事を順序よく説明できるなど、当てはまる項目が多かった。

視覚のチェックリストは、図鑑が好き、乗り物が好きなど、当てはまらないものばかりだった。

つまり、娘は聴覚優位、言語優位ということになる。

ただ、こうした結果には、私が『語りかけ育児』という本を参考にしながら、言葉かけに情熱を注いできたことも関係しているのかもしれない。

聴覚と言語が伸びる環境づくりができていたことで、それらの認知特性が早めに発揮された可能性もある。

逆に、視覚が伸びる環境づくりができていたかというとあまり自信がない。

娘はまだ4歳。今後、多様な経験をする中で何か変化があるかもしれない。

結果は参考にしつつも、あまり先入観を持たないように気をつけたい。

私の予想どおり、子どもの認知特性テストにおいて、言葉の発達の早さは聴覚優位の特性とされていた。

でも、おそらく例外は山ほどあるのだと思う。

私の知人に、お父さんがピアノの調律師をしていて、本人もかなり歌がうまく、おそらく聴覚優位なのだろうな…と感じる人がいる。

でも、その人は「自分は3歳までほとんど言葉が出なかったらしい」と話していた。

逆に、優れた映像記憶を持っていて、学力も突き抜けて高く、おそらく視覚優位、言語優位だと思われる友人が「自分はかなり言葉が早かったらしい」と話していたこともある。

聴覚&音タイプの耳のよさは、言葉の早さに繋がりにくいのだろうか。

言語優位の特性が、言葉の早さにつながることもあるのだろうか。

なんにせよ、子どもの認知特性テストから正確な結果を得るのは難しいのだと思う。

著者のいうように、「親御さんのカン」が一番信頼できるのかもしれない。

おわりに

本書を読んで、人間の能力の見方について、たくさんのことを学べた。

ただ、能力というのは高ければ高いほど幸せになるものでもないと思う。

ある程度の収入を超えると、収入と幸福度が比例しなくなる…みたいなグラフを見たことがあるけど、それは能力についてもいえることではないだろうか。

結局は、自分の能力を「どう使うか」というところで、人生の豊かさが決まるように思う。

だから、より高く、より高く…と子どもの能力を伸ばそうとする過程で、子どもの心を歪めるような関わり方があっては本末転倒だ。

でも、「適材適所」という言葉があるように、自分にあまりに合わない環境に身をおくのはつらいことだと思う。

そういったことを防ぐために、認知特性という視点を持って我が子を見ることは、大いに役立つはず。

ぜひ、多くの人に本書を読んでみてほしい。

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