はじめに
「これからの時代は創造力のある人間が強い!」という話をよく耳にする。
でも、そもそも創造力って何なのだろう。そんな疑問を持っていたので本書を手に取った。
著者の大黒達也さんは、オックスフォード大学、ケンブリッジ大学などを経て、現在は東京大学国際高等研究所で神経科学の研究をされている医学博士。
・創造力とは何か?
・創造的発想を生み出すには?
・創造力を育てるには?
…など気になる問いの答えが論文を根拠にわかりやすく書かれていて、すごく勉強になった。
専門用語が出てきて難しい部分もあるけど、創造力について理解を深めたい方にはぜひ読んでみてほしい。
内発的意欲が鍵となる
(意欲のタイプの)一つは、内発的意欲といいます。これは、達成感や充足感など、心の中から湧き出るような喜びを報酬とし、そういった報酬を目的とした意欲になります。
これまでは知らなかったような新しい(不確実な)情報を解決することで大きな報酬が得られるため、内発的意欲では、そういった不確実な情報に興味をもつようになります。ダレモレ人工知能研究所のユルゲン・シュミットフーバー教授によると、「創造性」はこの内発的意欲や興味の副産物であるとしています。
娘には内発的意欲を大切にして生きてほしい…と常々思っていたのだけど、それが創造性を発揮する鍵になるというのは意外だった。
子どもは内発的意欲にあふれた存在。大人がその意欲を削ぐようなことをしなければ、創造力はぐんぐん伸びていくのかもしれない。
引き続き、娘の様子をよく観察して「その行為自体を心から楽しんでいるか」というポイントに注意していきたい。
◇
生きていく上では、外発的意欲(承認や金銭的報酬を目的とした意欲)ももちろん必要。
でも、未就学児のうちは、なるべく外発的意欲を煽るようなことはしない方針にしたい…と改めて思った。
例えば、褒める行為。自然な感情で褒めることはあっても、子どもをコントロールする意図を持って褒めることはしたくない。
積極的には煽らないけど、無意識にやってしまう分には気にしない…くらいのスタンスでいこうと思う。
知能と創造性の関係
創造性は思考が多様に広がる拡散的思考が重要視される一方、知能は唯一の最適な答えを導くための収束的思考が重要であると考えられます。
知能と創造性は独立したものではなく、相互に協力し合うことで、新たな創造的発想力も発揮されていきます。要は、案をただ単に出すだけではなく、出した直感的・偶発的な案を、論理的な案に落とし込む必要があるのです。
知識が多すぎると、固定観念にとらわれて創造性を失うのではないか?
論理的思考ばかりしていると、発想がのびのびと広がらなくなるのではないか?
知能と創造性の関係についてこんな疑問を持っていたのだけど、本書を読んで創造力を発揮するには知能の働きも必要なのだとわかった。
それなら、娘がよほどの勉強嫌いでない限り学問の基礎はしっかり身につけてほしい。
興味のある事柄について、実体験や読書を通してどんどん知識を深められるようできる限りサポートしていこうと思う。
おわりに
「これからは〇〇力が大事」「こうすると〇〇力が伸びる」みたいなことが書かれた本はたくさんあるけど、「〇〇力とは何か?」について突き詰めて書いてある本は少ない気がする。
そういった意味でも本書は貴重な一冊だと思う。
数学のノーベル賞といわれる、フィールズ賞を受賞した数学者、広中平祐さんが、その著書の中で「創造のある人生こそ、最高の人生である」ということを語っていた。
我が子だけでなく、すべての子どもたちが創造の喜びを感じながら充実した人生を送ることを願いたい。
そして私自身も、ささやかなことでいいから自分のアイディアを形にすることを楽しんで生きていきたいと思う。
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