【読書】マンガをもっと読みなさい/晃洋書房/養老孟司/牧野圭一著

読書

はじめに

我が家の5歳の娘は、マンガが大好き。

最近、夢中になっているのはドラえもん。

お年玉で全45巻を大人買いしたものを、毎日コツコツ読み進めている。

お出かけのときには、必ず自分のバックに漫画を入れて、車での移動中、何かの待ち時間などに読んで暇を潰している。

そんな中で、本書の存在を知った。

私はもともと、著者の養老孟司さんのファンなので、尊敬する養老先生が娘のマンガ好きを肯定してくださるのなら、私にとって大きな励みになると思った。

本書は、養老先生と牧野圭一さん、お二人の対談形式。

牧野さんは、漫画家兼漫画文化の研究者で、京都精華大学マンガ学部の学部長も務められた方。

お二人のマンガについての考察が、大変興味深い一冊だった。

マンガが日本の文化になった理由

(養老)世界の多くの言語では、ある言語に対する音声はふつう一つだけ当てています。これは日本語の中では、カナがそうですね。「か」という字を書いたら「か」としか読まないのであって、それを「さ」とか「て」とか読んだらルール違反です。

(養老)そうすると、日本語にはカナがあって、また多重読みする漢字もあるのですから、脳の中のソフトは、カナを読む場合と漢字を読む場合では分けざるをえない。それが現に、皆さんの脳で起こっていることです。つまり漢字を読んでいるときとカナを読んでいるときでは、脳は別々の場所を使っているのです。

(牧野)それで、日本語教育をしっかりうけると、カナを読むところと漢字を読むところの両方が働くようになり、それがマンガの読解力につながるということ。マンガの絵が漢字、吹き出しの中の文字がルビと思ってよいわけですね。

日本語を読むときと、マンガを読むときの脳の使い方が似ている。

絵が漢字で、セリフが読み仮名。

漢字を読む脳とカナを読む脳を日々使い分けている日本人なら、マンガもスムーズに読める。

だから、マンガは日本の文化として根付いている。

すごく面白い視点だと思った。

逆に、マンガをたくさん読むことは、読解力の向上にも繋がるのだと思う。

ただ、想像力についてはどうだろう。

子どもの想像力を育てるには、情報量の少ないものを与えて、足りない情報を補うようにイメージを膨らませてもらうことが大切という。

その点、マンガは情報量が多すぎるように思う。

「同じ」と「違う」をつなぐ

(養老)感覚の世界と言葉の世界の大きな違いは、感覚の世界ではすべてが「違う」が、言葉の世界ではすべてが「同じ」だということです。リンゴは、赤かろうが青かろうが、大きかろうが小さかろうが、リンゴなんです。マンガはその「違う」と「同じ」をつなぐところに具体的に位置しています。

(養老)感覚世界が地面で、「同じ」という概念の世界は、天井です。神様がそのいちばん上にある。概念の世界に浸かっちゃうと、地面を忘れちゃうんですよ。マンガはじつはそれを思い出させてくれるんですが、「同じ」という世界に浸かっちゃった人は、マンガなんかくだらない、読みたくない、っていうんです。

この引用部分を読んで、私が子どもの頃よりマンガを楽しめなくなったのは、大人になって感覚が鈍くなったせいもあるのかも…と思った。

子どもの頃は、マンガを読み出すと止まらなくなって、続きが気になって仕方なくて、同じ作品を何度も何度も読んで…という感じだったけど、今はもう、そこまでの興奮を味わうことはない。

娘にも、マンガを心から楽しめる多感な時期に、たくさんの優れた作品を読んでほしい。

そして、いくつになってもマンガに感動できるような、感性豊かな人になってくれればいいなと思う。

フィクションの力

(養老)新聞に書いてあること、週刊誌の書いていること、テレビがやっていることで、ちゃんとしていると思われているものほど、たぶんどこかでウソをついているだろう。多少ものを考える人ならそう思うでしょう。

(養老)それではなにが信用がおけるのか?初めからウソだとわかっているものは、このぐらい確かなことはないのです。アニメはウソで、マンガはウソ。ファンタジーもウソに決まっている。その中でチラッとでも真実に見えるものがあったら、はるかに信用がおけるんですよ。

真実だと思っていたことに、ウソが混ざっていると腹が立つ。

裏切られたと感じ、信用できなくなる。

でも、作り話だと思っていたことの中に、真実を見つけると嬉しくなる。

すごくわかる。

人間ってそういう生き物なんだと思う。

これが、マンガに限らず、文学、映画、演劇なども含めたフィクションの力。

娘は、よく自分で考えた絵本を書いているのだけど、その姿を見ていると、物語を作るのがわりと得意なのではないかと感じる。

引き続き、文章を書く機会、良質な物語に触れる機会などをたくさん作って、この強みを伸ばしてあげたいと思った。

おわりに

娘には、今後も日本ならではのマンガ文化を思いっきり楽しんでほしい。

本書を読んで、そういう気持ちが強くなった。

それと私自身も、せっかく日本人に生まれたのだから、大人になってもマンガを楽しみたい。

「名作」と呼ばれている作品の中にも、まだまだ読んでいないものがたくさんあるので、これから読んでみようと思う。

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